ご挨拶

南宮湖
研究代表責任者:南宮湖(慶應義塾大学医学部感染症学教室教授)

このたび私たちは、 「コロナ制圧タスクフォース」で得られた貴重な知見と課題を基盤とし、将来のパンデミックに備えるための新たな多施設共同研究「ネクストパンデミックを見据えた呼吸器感染症の包括的研究(呼吸器感染症多層解析研究)」(中央一括審査)を立ち上げました。

COVID-19は5類感染症へと移行いたしましたが、今後も新興感染症の出現は十分に想定されており、今のうちから持続的かつ柔軟な研究体制を整備しておくことが急務と考えております。

本プロジェクトでは、現在および将来の呼吸器感染症に対して、

  • 多層的データの収集・統合(臨床情報、ゲノム情報、病原体情報など)
  • 重症化予測モデルの構築
  • 新たな治療・予防法の開発

といった観点から、感染症医療の高度化と迅速な情報共有と実行体制の構築を目指します。

つきましては、本研究の趣旨にご賛同いただける医療機関・研究者の皆様に、ぜひご参加・ご協力を賜りたくお願い申し上げます。詳細は別途資料をご用意しておりますので、関心をお寄せいただけるようでしたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

本研究を通じて多くの医療機関と力を合わせることで、次なる感染症危機に備えた体制を構築し、未来の医療に貢献できると信じています。新たな感染症対策の礎を、皆さまとともに築けることを心より願っております。 どうぞよろしくお願い申し上げます。

研究代表責任者:南宮湖(慶應義塾大学医学部感染症学教室教授)

本研究の背景

2019年12月、中国において新型コロナウイルス(COVID-19)が発生し、瞬く間に世界中へと拡大、全世界を巻き込むパンデミックを引き起こしました。世界保健機関(WHO)の推計によれば、2024年4月までに世界全体で7億人以上が感染し、約704万人が死亡したと報告されています。一方、日本国内においても約340万人の感染者、7万4千人の死亡例が報告され、医療体制や社会経済に甚大な影響を与えました。

その後、ウイルスの変異による病原性の低下やワクチンの開発・普及によって一時的に終息を迎えたものの、私たち人類はこれまでも新興感染症と幾度となく対峙してきた歴史があり、今後も新たな病原体の出現によって生命や生活が脅かされる可能性は十分に想定されます。

呼吸器感染症全体における罹患率・死亡率の詳細な統計は存在しませんが、肺炎は日本における死因の第5位を占めており、呼吸器感染症が現在も依然として深刻な脅威であることは疑いの余地がありません。

呼吸器感染症の特性として、異なる病原体が同一の部位に感染を引き起こすこと、あるいは同一の病原体が気道の異なる部位に感染を起こすことが知られています。このため、特定の病原体に限らず、呼吸器感染症全般を対象に、病原体および宿主の両側面から総合的な研究を進めていく必要があります。

私たちはこれまでに「コロナ制圧タスクフォース」を立ち上げ、多くの研究成果を挙げてきました(詳細は別ページ参照)。その知見と経験を活かし、今後の“ネクストパンデミック”に備えるべく、呼吸器感染症に関する包括的な研究に取り組んでまいります。

本研究の目的

COVID-19は5類感染症へ移行しましたが、新興感染症の出現や再興感染症の顕在化は今後も十分に予想されます。

本研究では、COVID-19に残された課題を踏まえて、医療従事者の研究参加が診療支援として機能するシステムや、効率的な情報収集システムの構築の実現を目指すことを通じて、次のパンデミック(ネクスト・パンデミック)を見据えた平時からのコホートの整備を進めることを目的としています。

また、ポストパンデミックのこの機に、基盤となる臨床・疫学情報を継続的に蓄積・整理しておくことで、すみやかな対応と分析が可能となります。

これらにより、将来のアウトブレイクに備えます。

現在および将来の呼吸器感染症に対し、以下の多層的アプローチを通じて、感染症の実態把握、重症化予測、治療・予防法開発に貢献することを目指します:

  • 起因病原体が不明な呼吸器感染症の包括的解析
  • 病原体が特定された症例における、宿主・病原体双方の精緻な解析
  • 将来のパンデミック発生時に、最小限のプロトコール改定で速やかに研究を再始動できる柔軟な設計。

本研究の特徴

従来の宿主中心の解析に加え、解析体制を整備し、病原体検出体制の強化を図りました。

  • FilmArray®呼吸器パネル(結果は臨床現場にフィードバック)
  • PBMC(末梢血単核球)分離

なお FilmArray®検査費を含むすべての解析費用は研究事務局(慶應義塾)が負担いたします。
当院ではすでに検体収集を開始しており、順調に進行しております。

※ COVID-19の経験から、急性感染症であっても Long COVID のように慢性化する可能性があることが判明しております。本研究ではこの経験を活かし、急性期(1ポイント目)に加えて、回復期(2ポイント目)の検体取得を推奨しております。 ※ 本研究用資材を検査会社との協力により独自に作製し、検体採取キットに検体採取手順書を同封することで、検体採取から提出までの流れをわかりやすくしました。

解析内容

  • 宿主側:DNA / RNA / 血漿
  • 病原体側:FilmArray®呼吸器パネル、メタゲノム解析
  • 免疫・細胞解析:PBMC分離・保存